・動画製作に試作はありません
元:試作はゼロです。常にぶっつけ本番で撮影して、うまくいかなかったらもう1回本番を撮るという感じです。ですから、これは試作だからカメラは回しませんというものはなく、ぶっつけ本番で撮るようにして、ちょっとハプニングがあったりしても、それを本番の動画と編集で繋げています。
里:撮影データは多くなりますが、途中でおもしろいものが撮れたりするので、それを編集で残したりします。
生放送ではないので、途中から日にちを変えて撮影することもありますし、新しいものを作っていても、前の動画に工程が同じ部分があるときは、前のデータも組み合わせて編集するときもあります。
・動画を撮る上でこだわっていることは家族の生活を邪魔しないこと
里:動画を見てくださった方からのコメントであまり音を録らないでくださいとよく言われるんです。またその逆で生活音を意識的に入れているのかとか、実はそのことについてはまったく考えていないですし、そこにはこだわりはありませんね。こだわっているとしたら、家族の生活を邪魔しないようにすることでしょうか。
元:こだわっていることは、一番の根っこにある自分たちの暮らしです。
ある動画クリエーターさんが、マイクに雑音が入って、マイクがいつまでも決められないと言っていたけれど、私たちの場合は、雑音が入っていても平気なんです。エアコンの音や、外の救急車の音も、別にこだわって入れているわけではなくて、私たちの動画は、自分たちの生活がベースになってできているので、そのベースである生活が不自然になってしまうと、それはわたしたちの動画ではないんです。
ですから、妄想グルメの動画が出せないときに、見ている人たちが「あ、妄想グルメさんなにかあったのかな?」と動画の向こう側を想像してもらえることも大事なことだと思っています。「動画出せてないですけれど、なにかあったのかな?」とか「今回はいつもと様子が違うけれど、飽きちゃったんですか?」とか、そういったところも含めて、映像の向こう側にある暮らしのリズムや充実感など、家族の暮らしを感じて欲しいです。
・海外の材料やみんなが知らない材料は執念深く追い求めます
元:珍しい材料は日本では手に入らないというのはないかもしれないです。
その辺のコンビニや普通のスーパーとかには売ってないかもしれないですが、輸入食品店や大型ショッピングモールなら無理しなくても手に入りますよ。
でも、本当に手に入らないものは海外に発注します。検索して、キーワードを追いかけていくと海外のサイトにたどり着きます。そして意外に手に入るんです。私たちは執念深いので、どうしても欲しいものがあったら意地でも追いかけてしまいますね。
里:情報を知っているものであれば動画も見ます。InstagramやPinterestを見て、どうやって作るんだろうと疑問に思っていると、最終的には海外の動画にたどり着きます。詳しく調べていくうちに目的の材料にたどり着きます。
あとはAmazonで探したりします。高価でもどうしても欲しいものがあったら夫に買ってもいいか聞きますけれど、たいていは買います。
元:1本の動画に掛かる材料費ですが、今バターが高値なので安いときに買い込んでいます。でも何万円分買うまではいきませんが。
もちろん1本の動画でバターを全部使うわけではなく、他の動画でも使います。砂糖とか他の材料も合わせると、動画1本あたりの費用は約3000円程度です。
里:どうしても季節外れのスイカが欲しいときがあって、そのときは3000~5000円くらいするのでお金がかかりましたが、普段の動画では材料費はあまりかかってないですね。
・この仕事をしていて良かったことはサラリーマンのときよりも家族と過ごす時間と収入が増えたこと
元:家族の時間が極端に増えたことと、サラリーマンのときよりも収入が増えたことです。サラリーマンをしていたときは、これだけのお金を稼ぐのに、どれだけ自分の人生を犠牲にしていかなければいけないのだろう思っていました。YouTubeを始めてからは、13年間サラリーマンをしていたときよりも収入が増えて、少ないコストで自分の能力や時間を有意義に使うことができます。そして大切な家族との時間も増やすことができた。その差は大きいですよね。
里:家族といる時間が増えたことは大きいですね。娘の授業参観では、夫はいつもいてくれるのでありがたいです。
さっき夫が言っていた“少ないコスト”のなかに、顔出しをしていないというのも入っています。顔出しをしてしまうと周りの人に認識されて、子どもたちも巻き込まれてしまうので、そこのリスクは大きいと思います。そのようなリスクは払っていないんです。でもそれなりにお金が入ってくるのは、他にはないYouTubeならではの状況ですよね。すごくありがたいことだと思います。
・YouTubの再生回数が必ず伸びる傾向と対策のようなものがないので、そこが悩みですかね。
里:妄想グルメの動画の撮り方は私たちだけだったんです。でもそのコンテンツがそろそろ視聴者に飽きられてしまっている気もします。だから常に変えていきたいと考えているのですが、今のことをやりながら、ほかのことをするのはむずかしいんですよね。
でも、家族がいつも「こういうことをやったら?」とか「こういうのどう?」とかいろいろ助けてくれるので、家族のためにもこれからもがんばっていきたいです。どんな形になるかはわからないけれど、動画は続けていきたいですね。
元:妄想グルメの動画が変わることで、今より伸びるのであればどんどん変えていきたいです。でも、必ず伸びる傾向と対策のようなものがないので、そこが悩みですかね。
私たちは昔からYouTubeをやってきていますが、もしかしたら今後、古いチャンネルは新しく出てきたチャンネルよりも人気が下がるかも知れない。だから私たちは、あえて昔ながらのオーソドックスなものを続けていたほうがYouTube側が私たちの動画を丁度良いポジションに置いてくれるのではないかと思っています。
・この仕事をしていて無意識にやってしまうことは、日常の買い物のときもアイディアが湧いてきてしまうことですね
里:この仕事をしていて以前と違うことは、日常のちょっとした買い物のときでも自然とアイディアが湧いてきてしまうことですね。道具の写真とかを見ていててもその道具の本来の使いかたではない使い方というか、別な使い方のアイディアが湧いてきます。
たとえば、100円ショップでも正規の道具として売られているものが、ハムを抜くものだとします。それをハムを抜くものではなくて違うものを抜いてみたら面白いんじゃないかなとか、そういうことを考えてしまう。そしてこういうときはとりあえずそれを買ってみます。ですから、日常的にたえず周りにあるものを意識して見ていると思いますね。
・家族があるところからクリエーティブが生まれる
元:私たちの世代のクリエーターのイメージって、家族とは別なところに位置するもののイメージがあるような気なします。中にはクリ エーティブなものを作っていても、代わりに家庭がボロボロになってしまうことがよくあると聞きます。私はそこにずっと違和感を感じていました。
私にとってのクリエーティブというのは、自分の家庭や生活など、そういうことはしっかりあってこそ、本当のクリエーティブの強さが生まれるのではないかと思っています。
妄想グルメの動画がクリエーティブな動画と呼んでもらえているのであれば、私は家族と、家族との生活の部分をしっかり押さえて、そのうえに乗るひとつのクリエーティブの形というものがあっていいんだろうなと思います。
・継続ができるということは力がある証拠なんだと思います。
元:継続は力なりという言葉があるけれど、私は継続したら力がつくという意味にとらえられるのが間違いだと思っていて、継続ができるということは力がある証拠なんだと思います。
私は親に無理やりバイオリンをやらされていたときがありました。正直やりたくないし、興味もないし、でも続けていれば何かいいことがあると信じて8年間続けました。ですが、結局なにもいいことはなかったんです。全然向いていないし、間違えてても続けてさえいれば、我慢さえしていれば力がつくんだと思っていると、これは悲劇の始まりなんです。継続していればいいわけではないんですよね。
私たちは、YouTubeを始めてから今まで、たまたま自然体な形で継続することができたんです。でも普通はできない人のほうが多い気がするんです。
無理なく自然体で続けていられる継続をしていくことが一番大切なんだと思います。
・新しくチャレンジしたいことは、新しい妄想グルメを探っていくこと
元:新しくチャレンジしたいことは、たとえば、YouTube以外のところに動画を出すとか、ショートフィルム的なものにするとか、あるいはもう完全にLIVEばかりやるとかですかね。いろいろ考えられます。
里:家族のクリエーションを見てみたいです。家族の得意なことや、私の知らない部分とか、いろいろな面を見つけてみたいです。そういうことでなにか面白いことができるかもしれない。
どんどん世の中が変わってきている中で、ずっと同じことをやっていてもだめだと思うので、常に新しい妄想グルメを探っていきたいです。